kodebuyaの日記

労働問題が最近多くなった食レポブログです。

「所得格差は本当に問題」

池田信夫やら田原総一朗が大手を振って寄稿している現代ビジネスなので、期待する方がバカなんだろうけどもこの記事は酷い。

アダム・スミスの「生きるヒント」 第11回 「所得格差は本当に問題か?」  | 木暮太一の「経済の仕組み」 | 現代ビジネス [講談社]
同記事はこういう。

現代では、格差は「非常に大きな問題」と捉えられています。たしかに社会に不公平感が蔓延し、暴動やデモが起きるなど社会が不安定になるかもしれません。しかし、だからといって富が増えなくていいのでしょうか?

格差が生じたとしても、国全体の貧困が救われる社会と、みんなで貧乏な状態にいる社会と、どちらがいいでしょうか?

(中略)

たしかに現代では、資本主義を「神の見えざる手」に基づいて各自が自分の利益を追求した結果、かつてないほどに格差が広がっています。

 米議会予算局の報告で、過去30年の所得推移をみると、

◎ 富裕層上位1%は275%の所得上昇
○ 富裕層上位20%は65%の所得上昇
△ 貧困層下位20%は18%増に留まる

 という結果だったようです。

 ここから過去30年「金持ちはより金持ちになったこと」「所得格差が拡大したこと」がわかります。そのため、「スミスの時代と現代は違う」という反論も多く出るでしょう。

 ですがここでは、さらに一歩立ち止まって「本当に格差が問題なのか?」と改めて問いたいと思います。

格差に対する意識を明確にするために、まず以下の問いを紹介させてください。

 みなさんがAとBのどちらかの状態になるとしたら、どちらを選びますか?

A)自分の年収が500万円、周囲の年収が250万円
B)自分の年収が1000万円、周囲の年収が2000万円

 この問いの意図が分かりましたでしょうか?

 合理的に考えれば、「B」の方が好ましいです。その証拠に、

A)自分の年収が500万円
B)自分の年収が1000万円

 とだけ聞かれたら、誰もがBを選ぶでしょう。

 しかし、現実には「A」を選ぶ人が多いのです。アメリカの調査では、「A」を好む人が約半数という実験結果が出ています。

 Bの方が明らかに経済状態としては「良い状態」です。しかし、約半数の人がAを選んでいます。なぜか?

 それは、「他人と比べているから」ですね。わたしは、これが格差の本質的な問題だと考えています。

つまり、他人と比較して、劣等感を抱く、もしくは惨めな想いをするから格差は「悪」としているのです。

 もちろんその感情は理解できます。車が好きな人は、自分が欲しい車に乗っている(乗れている)人を見ると嫉妬をするかもしれませんし、旅行好きの人は、お金と時間が潤沢にあって、年中海外旅行に行ける人をうらやむでしょう。

 しかし、万人を同じ状態にすることができない以上、そのような感情は一生消えることはありません。そのような他人と比較する気持ちに配慮して国の政策を行うべきではありません。

また、格差をなくすために「底辺の生活」を強いるのは、国民の幸福を考える上で適切ではありません。生活品を得られない「未開の国」と、経済が発展し、貧しい人でもある程度のモノが手に入る国ではどちらがいいのでしょうか?

「社会福祉」の観点から見ても、経済が発展した国の方がいいはずです。

「自分(A)よりBさんの方がたくさんもらってる! ズルい!」

 このような不満への対処法は2つ。ひとつは、Bさんの取り分を減らすこと。もうひとつは、Aさんの取り分を増やすこと。

どちらが長期的にいい判断なのか、解説する必要もないと思います。スミスが富の増産、自由競争を主張したのは、正しい判断だったのです。

今の格差の問題って、そんな「妬み」の一言で片付けることが出来るものなんだろうか?
確かに「妬み」の問題はあるだろうけれども、それは今の日本社会では生活保護バッシングにみられる「あいつら俺が働いて儲けている以上に生活保護を受給している!!」というもので、それが引き下げ圧力になっているんじゃなかったっけ。
もしくは大阪市を典型とする公務員バッシング*1といった「なんだか特をしているように見える連中を引き下げたい」という話。
この意味においてはこの論者の主張は正しいだろう。
ここでBさんの取り分を減らすことは、消費指向性を下げることになり、かえって日本経済の停滞をもたらすことになる。

今の日本で起きていることは、一方では引き下げ民主主義の問題と、もう一方では今まで500万円もらっていたAさんと1000万円もらっていたBさんが、ここ数十年でAさんは400万円になり、Bさんは1200万円になったという意味での格差の拡大であり、この論者が言うような「B)自分の年収が1000万円、周囲の年収が2000万円」になったなんて話ではない。
日本の問題は再分配をすると格差是正効果が非常に小さい*2ということにあり、これをせめて先進諸国並みにする必要があると言うことだと思うのだが。

そして経済の拡大を合言葉におこなった一連の税制改革で本来したたり落ちるはずだった富が富豪へ逆分配されていったのがこの日本の数十年の歩みであり、トリクルダウンなんて期待するほど無かったというのが結論なのではなかったか。

一つはっきりわかることはこの論者はトリクルダウンを信奉しているということで、この論者が言うような形での経済の拡大ができたとしてもそれの果実は格差をさらに拡大する方向にしか働かないであろうということだ。

*1:公務員バッシングの典型についてはhttp://www.j-cast.com/2012/09/21147316.html 満額残業代が出ていることがこの問題を提起した市議にはお気に召さなかったようだが、逆にここまで働かなければ回らない職場ってやはり問題だろう。

*2:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4666.htmlを参照されたい