kodebuyaの日記

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ゆるい就職:若者が正社員で働くのは「負け」 慶大助教が提案 - 毎日新聞

 「今どき、若い世代が正社員で働くのって『負け』だと思うんです」。正社員で長時間労働に苦しむシステムエンジニアの男性(23)が発言すると、会場に集まった約60人の若者から賛意のどよめきが起こった。

 次々に発言が出る。「週休2日じゃ自分の好きなことなど何もできない。それで退職しました」「残業続きで生きるために働くのか、働くために生きるのか分からない」「会社説明会に行っても金もうけ以外に働く目標が見えない。意味があるのか」「起業をしたい。週5日、会社に合わせて働く気はない」。そのたび若者たちは深くうなずく。

 これ、「ゆるい就職」に関心を持つ若者たちが18日、東京都内で「週4日の休みをどう使うか」などを話し合ったワークショップの一場面だ。「ゆるい就職」は人材紹介会社「ビースタイル」(本社・東京都新宿区)の事業。週休4日、つまり週3日働いて月収15万円の仕事を紹介するという。派遣など非正規雇用。15万円は額面。手取りでは12万〜13万円か。週3日勤務は社会保険の適用外だ。

 企画した若新さんは「週5日勤務を『人生すべてを仕事に支配される働き方』『仕事のために人生があるわけじゃない』と感じる若者が増えています。大多数は違和感を抑え、安定にしがみつくが、そこから一歩を踏み出そうとする若者がここに集まった」と説明する。

 「ゆるい就職」のうたい文句は「週5日勤務の『あたりまえ』がバカらしい」。ウェブサイトには「正規雇用など安定した就職を希望している方は間違っても応募しないでください」の注意書きも。それでも9月上旬の説明会には、定員の4倍、360人が応募した。

 実際に説明会に足を運んだ約150人の内訳は、既卒が7割、現役学生が3割。男女比は7対3。学歴は比較的高く、いわゆる「MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)以上」が35%を超えた。若新さんによると「3分の1が芝居や音楽などの趣味や芸能活動を続けたい人、3分の1が起業やプロジェクトをはじめる準備時間がほしい人、残り3分の1が『今後やりたいことを模索したい人』」。共通点は、勤務地や労働時間、職務に制限のない「正社員」という働き方への疑問だ。

(中略)
 
 一部で「ゆとり世代の新しい働き方」などと好意的に取り上げられる中、「『週休4日で15万円』は別に新しくない。どんなに言葉で飾っても内実はアルバイトやパートタイム労働と同じ。使い捨てられかねない」と指摘するのは、ブラック企業対策プロジェクトのメンバーでNPO法人POSSE事務局長、川村遼平さん。「かつての『フリーター』、最近の『ノマド』など、サラリーマン的働き方へのアンチテーゼはどの時代も若者を魅了する。しかし働き方の多様化を実現するには、非正規でも安定した暮らしができる社会制度が前提です。『ゆるい就職』では年齢が上がると、収入や社会保険などの面で生活に行き詰まり、ダブルジョブ、トリプルジョブを強いられる危険もあるのではないか」

 東レ経営研究所ダイバーシティワークライフバランス推進部長の宮原淳二さんは「主婦や高齢者、セカンドキャリアを考え始める55歳くらいの人にはこの選択肢は面白い」と評価しつつ「新卒などこれからキャリアを積む20代には、雑多な仕事をこなし実力をつける『雑巾掛け』が重要だ。それをはしょると30、40代の仕事に響く。また『週休4日』の仕事は転職時の職歴として評価されない可能性が高い。『週休4日』を短絡的に捉えず、自身のキャリアを見据えた選択が必要だろう」と助言する。

 ビースタイルの「ゆるい就職」プロジェクトリーダー、宇佐美啓さん(30)は「若者全員にこの働き方を押しつけるわけではない。選択肢を増やしたいだけ。安定を得る代わり単身赴任も長時間労働も受け入れ、家族を養うのが当然だった50、60代男性と今の若者とは見える光景が違う。ワーク・ライフ・バランスを大事にし、仕事以外にも充実感を得たいのが僕ら、そしてより若い世代」と説明する。

 採用に関心を寄せる企業はIT業界を中心に広告、印刷業界など約20社。社員約100人を抱えるIT企業「イノベーション」の富田直人社長は「景気が良くなり、中途採用で良い人材が採れない。チャレンジ精神のある優秀な人材が採れるなら、週休4日でも構わない」。しかし、ほしい人材は「新卒者と同等レベル、つまり一流大卒で高校で生徒会長をやるくらいリーダーシップがあり、コミュニケーション能力が高く、人当たりも良く、企業文化になじめる人」。結構ハードルは高い。

(後略) 

このプロジェクトの発案者の言い分は、あの竹中平蔵の迷言「みなさんには貧しくなる自由がある」*1を彷彿とさせるもので、「流石慶応大学の経済学部」と嫌味の一つも言いたくなるものだ。

毎日新聞は両論併記の形で紹介はしているがこの制度の問題点は

「『週休4日で15万円』は別に新しくない。どんなに言葉で飾っても内実はアルバイトやパートタイム労働と同じ。使い捨てられかねない」

の一言に尽きるだろう。

先日厚生労働省は短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大を公開*2したのだが、この拡大の肝は今までは社会保険適用外だった週30時間未満の労働者のうち

  • 週20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  • 勤務期間1年以上
  • 従業員501人以上の企業((現行の適用基準で適用となる被保険者の数で算定。))

に該当するものを被保険者とするもので、影響緩和措置はとられるものの大企業に負担を求める内容となっている。大企業にしてみれば人件費の更なる負担は避けたいところであり、厚生労働省が公開したとおりの運用になれば上記のような勤務形態のニーズが高まるであろうことは容易に予想が付く。
そう、新手のリストラ手法になる可能性が高く、期待されるような

週5日勤務を『人生すべてを仕事に支配される働き方』『仕事のために人生があるわけじゃない』と感じる若者が増えています。大多数は違和感を抑え、安定にしがみつくが、そこから一歩を踏み出そうとする若者

の為の正社員制度になり得ない可能性が高いと言うことだ。
思えば、自由な働き方で自己実現ということで拡大された派遣制度というのが元々あったはずであったがその肝心の派遣が派遣法改正の関係で派遣業者が激減しその結果派遣社員が減少してしまい派遣先企業が使いにくくなったのだけれど、その変形・補完としての制度ではないかとしか私には思えない。

毎日新聞の記事はいみじくもこう書いている。

ほしい人材は「新卒者と同等レベル、つまり一流大卒で高校で生徒会長をやるくらいリーダーシップがあり、コミュニケーション能力が高く、人当たりも良く、企業文化になじめる人」

これくらいのスペックでかつ、『人生すべてを仕事に支配される働き方』『仕事のために人生があるわけじゃない』と考えるならば、無理に正社員でなくても学生ベンチャーで起業した方がいいのではないかと思う。
「正社員」という響きに騙されてはいけないと、人生の先輩は思ったりする今日この頃なのだ。