kodebuyaの日記

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NHKスペシャル「老人漂流社会 "老後破産"の現実」

NHKスペシャル|老人漂流社会"老後破産"の現実

高齢者人口が3000万を突破し、超高齢社会となった日本。とりわけ深刻なのが、600万人を超えようとする、独り暮らしの高齢者の問題だ。その半数、およそ300万人が生活保護水準以下の年金収入しかない。生活保護を受けているのは70万人ほど、残り200万人余りは生活保護を受けずに暮らしている。年金が引き下げられ、医療や介護の負担が重くなる中、貯蓄もなくギリギリの暮らしを続けてきた高齢者が“破産”寸前の状況に追い込まれている。在宅医療や介護の現場では「年金が足りず医療や介護サービスを安心して受けられない」という訴えが相次いでいる。自治体のスタッフは、必要な治療や介護サービスを中断しないように、生活保護の申請手続きに追われている。
“老後破産”の厳しい現実を密着ルポで描くとともに、誰が、どういった枠組みで高齢者を支えていくべきか、専門家のインタビューを交えながら考える。

昨日放映のこちらの番組を興味深く見た。
番組内では3つのケースが紹介されるのだが、うち1番目と3番目のケースはほぼ国民年金((所謂「基礎年金部分」))は満額支給を受けているにもかかわらず憲法が保障する最低限度の生活生活ができないというもので、2番目は生涯国民年金のみ加入し、かつ、年金未納期間があるので満額支給すら受けることができないというものだった。

以下、感想を。

年金の2面性

年金には

  • 保険

の 2つの面がある。
年金を考えるときにどちらの立場で考えるかで大きく結論が変わるのが老齢(基礎)年金だ。
現行の保険制度は全国民共通の国民年金を基礎として、その上乗せ部分としてサラリーマンとその配偶者が加入する厚生年金保険や、公務員などが加入する共済年金、所謂1号被保険者が加入する国民年金基金となっている。
上乗せ部分は、あくまでも上乗せなので支給事由の発生原因がなんであれ保険事故が起きた場合、今まで支払った保険料に応じて支給されるものであるので、まさに「保険」の性格が全面にでている制度だと言える*1
一方、基礎年金部分については「基礎」ということなのであまねく支給事由の発生した国民には支給されるものであり、特に障害・死亡を原因とするものについては所定の保険料納付要件さえ満たせば*2満額の支給がされる。
つまりセーフティネットの面を重視していると言えるものだ。
死亡・障害は突然起こりうるもので、その備えをすると言っても難しいケースがあるからだ*3
その一方老齢基礎年金は「保険」の面を重視している。すなわち保険料の納付実績に応じて年間最大78万円程度の年金が支給される制度であり、厚生年金保険のそれに近いものといえるのが現行の制度だ。
たしかに「老齢」という保険事故は誰しも当然に起こりうることであり、その備えをしなかったことは自己責任と言えるのであろうが、後で述べるとおり年金制度の設計が現在の日本の家族制度と乖離してしまっていることもあり、「保険」の面だけを強調すると「セーフティネット」の面が意味をなさなくなってしまいかねない。一方「セーフティネット」の面を強調すると、現在の年金額ではいかにも足りない(満額でも約月6.5万円しか支給されない)ということになり、その増額分の負担が現役層に大きくのしかかるということになってしまう。

厚労省の考えるモデル家族

現在の年金制度の基になった旧国民年金制度は昭和36年4月に始まったものだが、これは、番組でも指摘があったことだが

  • 右肩上がりの経済
  • 3世代同居
  • (これは指摘されなかったが)超高齢者社会の早い到来はない

を前提に設計されたものだった。
つまり、年功序列で上がる給料で親と子どもの面倒を見た現役世代が、引退すると今度は子どもの世代が自分と孫の面倒を見る。子どもが引退すると今度は子どもの子どもの世代が・・・という扶養関係を前提に、孫の小遣いや3世代家庭の家計の足しにと支給するのが老齢年金であるということだ。
経済の成長は鈍化し、核家族化は進行した。高齢化社会が想像以上のスピードで到来した。
孫の小遣いや3世代家庭の家計の足しに支給される年金を家計のメインにして生活する人が増加するとは厚労省は思えなかったということだ*4

都会より地方の方が危機的状況といえる

番組で紹介された1と3のケースはいずれも都内で、1については区の行政の援助の元生活保護を受給できるようになり危機は脱した*5。また、3番目のケースも定期的に介護保険法による居宅サービスを受けており、そういう意味では行政とつながっている状態であった。これらはまだ、財政に余裕のある地方公共団体だからできたことだと思える。
第2の秋田県のケースでは月2.5万円の年金受給でありながらなんの公的支援も受けていないというものであったが、地方の高齢化の進行はすさまじいものであり、そのような高齢者を多く抱える地方公共団体は支援の手をさしのべるということはほぼ不可能な状態のように見えた。

高齢者医療費の負担をどうするか

番組内の3ケースともいずれも重大な持病を抱え、その医療費が家計に多大な負担をかけていた。
現在の後期高齢者医療制度においては、被保険者の自己負担割合は原則1割となってはいるが、定期的に通院を余儀なくされることが多い高齢者にとってはその自己負担であっても多大な負担になってしまうことは容易に予想される。
番組内では健康保険にある「特定疾病患者の負担軽減制度」のように、自己負担額が一定の金額を超えればそれ以上の負担を求めないような制度にするべきとの提案があった。
財源の問題がついて回るので実現は困難かと思うが、収入の割合に応じて負担の上限額を決めるのはいい方法だと思う(実際に健康保険では同様の制度があるし)。
後期高齢者になると病のリスクが高くなるのは若い頃の不摂生云々があったにしても当然起こりうる話であって、いわば衣食住にかかる経費と同様に考えるべきだ。

今の年金受給者を考えることは将来の自分を考えることだ

現行の年金制度が破綻状態にあるのかどうかということは論評できる立場にないが、少なくとも誰しもが起こりうる老齢については十分に考えた方がいい。
「ゆるい働き方」を選択し、「どうせ年金なんて俺たちはもらえないから」と保険料を払わない(というより払えないというべきか)のも人生だが、少なくとも「600万人を超えようとする、独り暮らしの高齢者の半数、およそ300万人が生活保護水準以下の年金収入しかない。」という事実は一度見ておいた方がいいだろう。

*1:もちろん国民年金に比べてという意味であって、障害・死亡を原因とする場合は別途調整が入るケースもある

*2:つまり保険料が未納であってもその程度がひどくなければよいということ

*3:若くして障害を抱えるケースを想起されたい

*4:ちなみに高齢者世帯所得の中で公的年金等が占める割合は70%前後

*5:年金受給者でも生活保護を受給することは可能であることは次のリンクを参照されたい。 「NHKスペシャル 老後破産」を防ぐためには…(藤田孝典) - 個人 - Yahoo!ニュース