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kodebuyaの日記

再分配にYES!!そして橋下にNO!!の食レポブログです。

1年では短すぎる

東芝に限らず東証一部上場企業で大型リストラが起こった年だったが、その際のセーフティネットとして存在しているはずの雇用保険について思ったこと。
きっかけはこちらの記事。
リストラターゲットは50代。希望退職の先にある「絶望」(河合薫) - 個人 - Yahoo!ニュース

(前略)
早期退職。別名、希望退職。正確には、「希望なきリストラ」である。

むろん、“希望”という接頭語のついた退職のもと退職を余儀さくされたのは、東芝だけではない。
ソニー、モバイル分野で2015年度末までに2100人の人員削減
セガサミーホールディングス、300人の人員削減
日本コロムビア、リストラの一環で全従業員の約3割の人員整理を実施
カドカワ(旧KADOKAWA・DWANGO)、232人を削減
損保ジャパン日本興亜ホールディングス、200人の人員削減
ニッセンホールディングス、120人の人員削減を実施
日本たばこ産業JT)、1754人の人員削減
シャープ、3234人の人員削減
ルネサス エレクトロニクス、2300人の人員削減
ワールド、453人の人員削減
今年に入ってから9月末までで、これだけの“名の知れた”東証一部上場企業で、人員削減が実施されている。
ルネサスでは早期退職後、人材派遣会社に再就職した元社員を、派遣社員として再び雇用するという、わけのわからない事態も起きた。

特に

ルネサスでは早期退職後、人材派遣会社に再就職した元社員を、派遣社員として再び雇用するという、わけのわからない事態も起きた。

ということで、これが派遣法に抵触しないのかが気になるところではあるが*1、いずれにせよ企業の体力が戻りつつあるときに人員整理を行うのはここ20年以上常套手段として行われてきた。
そんな不測の事態による離職者にとってありがたい制度が雇用保険による失業等給付の制度である。
記事は続ける。

世界各国のGDP国内総生産)に占める労働市場政策への支出を比較した場合、日本は「就業支援・訓練」などの積極的措置、「失業保険」などの消極的措置のどちらにおいても使われているお金の割合が各国よりも低い。

また、失業保険の給付期間も、欧米と比較した場合、かなり短い。
フランスでの失業保険の給付期間は最長36カ月、デンマークは2年間と長く設定されているほか、ドイツの保険制度は12カ月の期間終了後、更新可能な扶助制度がある。スウェーデンでは300日(18歳未満の子供がいる場合はさらに150日)であるが、支給期間を満了した後にも失業状態の場合、新たに300日間の支給日数が起算される。
長くなればなるほど、「働いて半端なカネをもらうくらいなら、働かない方がいいや~」という精神状態に陥るリスクも高まるので、長きゃいいってもんでもないかもしれない。
それでも、やはり日本は短すぎる。もう少し長くてもいいのではないか。

さらに、日本の失業は「完全失業(full unemployment)」を前提としているが、多くの先進諸国では、「部分的失業」も失業保険の適用対象としているので、通常の労働時間がゼロになる場合のみでなく、労働時間の削減を部分的失業者として扱い、手当が給付されている国が少なくないのである。
非正規の賃金の見直し、失業の概念を変えるなど、やる気ある50代を後押しする支援策を講じないと、ますます“萎えたミドル”が増殖する。早期退職する前の一年間を、国の援助の下、新しい職種や業種に必要なスキル(技能)の習得期間と位置づけるなんてやり方だってあるのではないか。

ここで雇用保険の特色を書いておきたい。

  • 失業等給付の受給期間、給付日数の制限がある。

失業の原因がどうであれ、雇用保険は失業前2年間に12か月以上の被保険者期間があることを原則として1年間という支給期間を設定する。
その上で被保険者期間、年齢、属性(特に就職が困難な者であるかどうか)、失業原因に応じて支給日数が90日から330日の間で設定される。
この「給付日数」とは失業等給付の基本手当(昔でいうところの失業手当)の支給を受けることができる日数のことをいう。
例えば
離職時点で30歳の者で、3年間被保険者を継続していた場合90日分の基本手当を失業の認定時から1年以内に受給することができる。
離職時点で50歳の者で、20年間被保険者を継続していた場合330日分の基本手当を失業の認定時から1年以内に受給することができる。
ここでのポイントは、基本手当ての支給日数は長く被保険者であった者にとってそれなりに手厚くなるが、受給できる期間は被保険者の期間の長短にかかわらず同じであるということだ。

  • 早期就職へのインセンティブがある。

引用はしなかったが、所定給付日数を3分の1以上残して(給付日数が90日の場合30日分以内しか受給しなかった場合)1年を超えて引き続き雇用が確実と見込まれる職業に就き、又は自分で事業を開始した者については、支給残日数を買い取って受給者に支給するという制度(再就職手当)があり、この手当を受給した者で、新就職先の給与が基本給付を下回る場合には差額の一部を支給するという 「就業促進定着手当」もついてくる。
要するに「どんな就職先でもいいからさっさと就職してくれ。すぐに職が決まれば報奨金を出すよ、何?給料が低い??わかった差額を少し面倒見るから雇用保険を使わないでくれ」ということだ。そして1年以上就業できれば仮にその後また離職するようなことがあっても被保険者の都合や懲戒解雇ということでもなければ、また雇用保険から給付を受けることも可能になる。

  • 支給額にボーナスは考慮されない。

おおざっぱに言えば、給付額は離職前直近6か月の給料の総額を180日(時給の場合は実労働日数)で割り、その50%に支給日数をかけたものが支給額となるが、給料にはボーナスは含まれない。ただし、ボーナスからも保険料は控除される。そういう意味では「保険」の持つイメージとは異なるやり方を取っている。日本のサラリーマンの多くはボーナスも生活費と見込んで家計を組み立てているケースが多く、その場合には離職により想像以上の収入減という事態が待ち構えることになる。

最後の点も大概問題だとは思うが、特に問題なのは1番最初の点であると私は思う。
引用記事に登場する方は40代後半で会社から追い出されるという憂き目に遭っているが、確かに40代からの再就職は困難を極める。また、経験といっても日本の場合そのノウハウがその企業限定になっているという場合も多く汎用性に欠くということも珍しいことではない。
つまり「余人をもって替え難い」ものがなければ相当条件を下げなければ転職が困難になるということになりかねない。
もちろん「そのような実力を培えなかったのは自己責任」とバサーと切られるのだろうけれども、多くの人にとっては「余人をもって替え難」くない業務を担っているのであってそのような人が新たに職業訓練を行ってとなると支給期間が1年ではいかにも短い。なお、雇用保険支給期間が終了した後に職業訓練を受ける者については「求職者支援法:から職業訓練受講給付金の支給があり得るが、そもそも雇用保険の被保険者であったことが必要であり、また。万一職業訓練校に入学できなければ受給できないという点もあって決して満足できる内容であるとはいえない。
ちなみにこの1年という期間は障碍者等就職が特に難しい者であっても同様であり、この点でも問題があると言わざるを得ない。

確かに「就職への真摯な努力」を求める雇用保険では、失業状態を長期化させかねないインセンティブをつけることはできないのであろうが、就職を急ぐことを強要するあまりに、不本意な就職先ならまだしも所謂「ブラック企業」の就職をせざるを得ないことになるのではないかと思う。
社会保障セーフティネットといわれるが、殊雇用保険はネットというより上に跳ね上がる推進力をつけるトランポリンのようなものであるべきだと思う。最近の雇用の需給関係の好転によって雇用保険の財政には多少なりとも余裕があるとのことではあるが雇用の需給関係なんていつおかしくなっても不思議ではない。財政に余裕のある内に職業訓練の充実や制度の(良い意味での)見直しを求めたい。

*1:派遣法40条の9:派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする場合において、当該労働者派遣に係る派遣労働者が当該派遣先を離職した者であるときは、当該離職の日から起算して1年を経過する日までの間は、当該派遣労働者(雇用の機会の確保が特に困難であり、その雇用の継続等を図る必要があると認められる者として厚生労働省令で定める者を除く。)に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。