kodebuyaの日記

労働問題が最近多くなった食レポブログです。

2000万円必要なのはこちらのせいではないだろう

久しぶりの更新になる。

老後の生活に年金では足りず2000万円が必要だという金融庁の審議会の報告を麻生太郎財務大臣が受け取りを拒否した問題で麻生はこんなことを言ったらしい。
以下NHKから引用する。

老後の資産形成で「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会の報告書について、麻生副総理兼金融担当大臣は「現場で作業していた人たちがもう少しきちんと丁寧にやればよかった」と述べ、報告書を取りまとめた金融庁の担当者の対応に問題があったという認識を示しました。
(以下省略)

老後2000万「現場がもう少し丁寧にやればよかった」麻生金融相 | NHKニュース

政府の意向に合わせようがなにしようが不足があることは事実で、それを真摯に受け止めてどうするのか議論するのが政治なのだとは思うが、この政権は不都合なことはとりあえず隠ぺいすればいいという考えが根本にあるのでいまさら感しかない。
また、政府の意向に基づいて財政制度等審議会は1年前の建議に記載した「自助」という文言を削除するようだ。

財政制度等審議会財務相の諮問機関)がまとめる2020年度予算案の編成に向けた建議(意見書)の概要がわかった。公的年金財政検証をきちんとして制度の「持続可能性を担保すべきだ」との考え方を示す。金融庁の金融審議会がまとめた老後資産の報告書問題を受け、1年前の建議に明記した私的年金などでの「自助努力」との文言は削除する方向だ。

年金制度「自助努力」削除へ 財制審建議 :日本経済新聞


・何故2000万円が必要になったのか
日本の年金制度は以下の前提で作られていた。
1.年金受給後5年から10年で死亡する。
2.2世帯以上同居(現役世代との同居もしくは現役世代からの仕送りが見込める)

1.についてだが次の表を示す。
f:id:kodebuya1968:20190615170425j:plain  
出典https://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/24forum/pdf/tokyo-s3-2.pdf

このグラフでは男性の平均寿命が
1950年 58.0歳
1960年 65.32歳
1970年 69.31歳
となっている。
今でこそ老齢厚生年金の受給開始は65歳*1からとなっているが、制度発足当時は55歳であり、その後60歳に引き上げられた。ということは、年金を受給してから10年程度で亡くなるというのが制度の考えとしてあったと思われる。
勿論そうしたには理由があって、老齢年金は終身年金であるので、保険という面で考えれば支給期間が長くなればなるほど支給に必要な原資が増大するということであり、保険料負担を抑えるために必要な考えだったのであろう。
そして、高齢化が進むことを見込んで順次受給開始年齢は引き上げられた。

しかし、急激な高齢化は見込を大幅に超えた。
1980年 73.35歳
1990年 75.92歳
2000年 77.72歳
10年を超えるようになったのだ。
金融庁の試算で2000万円足りないというのは、毎月5万円足りない分を積み重ねるとそれだけ不足するということだから、仮に年金支給から10年で死亡するとすれば300万円不足ということになる。
300万だってたいした金額ではないか、と思うが、ここにもう一段セーフネットが用意されてある。
それが2.の2世帯以上同居(現役世代との同居もしくは現役世代からの仕送りが見込める)という点だ。

2世帯で同居ということであれば、現役世代がリタイアするのと先後して子ども世代が現役世代に参入するのであり、世帯全体の収入は親世代については年金ということで減収となるが、現役世代は増収する*2ので、下がることがなく、不足の300万円は十分に賄えたのだ。

しかし、
1.右肩上がりの経済が崩れ現役世代に親世代を養う余裕がなくなったこと
2.さらに現役世代の収入が下がり現役世代の生活も厳しくなり、子どもを養う余裕もなくなったこと
が、核家族化と少子化を急激に進展させることになった。
その結果、年金世代は不足する生活費を自助で賄うしかなくなってしまった。
結局、2000万円の不足は麻生の思うような自助努力が足りなかったためなんかではなく、政治の無為無策が原因といって良いものなのだ。
それを無視して高齢者の資金形成に不向きといわれる投機でまかなえといわれるから炎上しているのだ。

・年金世代の不足額は経済成長を考えると2000万ではないのではないか
政府は継続的な経済成長を考えているようだが、高年齢化が今後も進んでいくとすれば今後の消費の主役は高齢者となる。結局国内GDPの60%を占めるといわれる個人消費は高齢者の消費の如何に関わってくる。
そうなると、高齢者に金融商品の投資によって不足分をまかなわせるだけではなく、さらに消費もさせなければ経済成長は見込めなくなる。
年金の継続性も結構だが、今後高齢者に安心して消費させる必要があり、そのための仕組みが必要なのではないかと思う今日この頃だ*3

*1:昭和60年(1985年)から

*2:年功序列、経済が右肩上がりであることが前提だが

*3:年金の原資の半分は税金であり、政府が喧伝する「消費税増税分は社会保障費に充てる」ということが正しいのであれば、消費が増大することこそが年金の安定性を増すことになる。