国民健康保険税の逆進性
サンデー毎日の「国民健康保険料 こんなことが許されるのか! “サラ金”より酷い! 非情取り立ての実態 生活費も子ども名義の生命保険も」
http://mainichi.jp/sunday/articles/20160222/org/00m/040/008000d
という記事を読んだ。
かってあったサラ金パニックの時代と異なり、まともなサラ金業者であればコンプライアンスは守って当然ということになるので、題名は少々言い過ぎのような気もする。
ましてや国民健康保険料の徴収については、国税滞納処分の例による強制執行が認められていることを考えるといくらでもやりたい放題という事態になることは当然といえる。
この記事を読んで「なんかで同じような話を読んだぞ」と思ったので本棚をひっくり返すとこの本に同じようなことが書いてあったのだった。
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ここでもやはり徴収する側のノルマがありというような話になっていたのだが、大体きついノルマを課すと担当者が暴走するのは商工ローンでも同じ事だったわけなのだからノルマで人を動かすやり方自体に危険性があることをもっとマネジメントする側はわかった方が良いのではないかと思ったのであった。
ここまでは前振りで、本題は国民健康保険の逆進性ということだ。
そもそも国民健康保険料(税)はどのような算式で計算されているのか?
市区町村によって料率などに違いがあるのだけれども、
国民健康保険料の計算方法をわかりやすく解説|知っておきたい税の基本
にあるように((大阪市の例))
世帯全員の収入に対して料率をかける所得割だけではなく、1世帯単位にかけられる平等割(定額制)、被保険者数の頭数に所定の金額をかける均等割を加えて算出するということだ。
単に応能負担というだけではなく(協会けんぽや組合健保は応能負担のみ)、一律にかけられる負担がありそれが結構な金額になりかねないということが問題となる。
国民健康保険料(税)と定額負担
元々国民健康保険は会社員等が加入している健康保険をモデルにして作られたものであったが、当初予定していた加入者は会社員等以外の自営業者とその家族と考えていた。
「保険」である以上、被保険者は保険料を支払うことで万一の場合の保障を受けることができ、かつ、被扶養者という概念がないものだからご隠居さんやそのお店の子ども達といった稼がない人々の保険料を算定する場合に定額負担をさせるということはそれなりに合理性があったのだろうと思う。
そこで逆進性が生まれた
しかし、いまや自営業者は減少の一途をたどっており、国民健康保険の加入者として占める割合は減りつつある。
その一方で、
・後期高齢者
・ニート
・働く能力を欠いた人*1
の占める割合が相対的に増加してきた。
彼等の多くは年金を受給したり、もっと酷い場合は無収入に近い状態であったりする。
そうなると定額負担分が彼等の背中にのしかかってくるということになる。
例えば
算定基礎収入が120万円の者(一人暮らし40歳未満とする)の保険料負担額は148,108円となり、収入に対する負担割合は12.34%になるのに対し、
算定基礎収入が500万円の者(一人暮らし40歳未満とする)の保険料負担額は449,828円となり、収入に対する負担割合は9.00%になる。
逆進性が生まれるのだ。これにさらに子どもなどを追加していくとその差はますます拡大していく。
国民健康保険こそ応能負担の原則に忠実であるべき
現在の日本では「国民皆保険」の建前があり、国民健康保険を脱退するには協会けんぽや組合健保等の加入員になるしか方策がない。
任意脱退することができない以上、能力に応じた程度での保険料負担*2をする必要はむしろこちらの方が高いのではないか。
自治体によっては「税」と同じ扱いにしているが、税というのであれば減免措置があることを確定申告の書類にあるのと同様に被保険者に通知するべきだともいえるだろう。
因みに納税の義務は応能負担を意味するのであって、絶対的に義務に応じなければならないものではない。
国民健康保険についても、どこまで有効化はわからないが*3、状況が悪化したというのであれば速やかに自治体の国民健康保険課に相談するのがまず解決への第一歩だろうと思う。