kodebuyaの日記

労働問題が最近多くなった食レポブログです。

それでも年金は悪い制度ではない。

確かに厚生労働省のマンガは問題がある。

厚生労働省がネットで公開したこちらのマンガが非難を浴びている。

いっしょに検証!公的年金 | 厚生労働省
特に批判を浴びたのは主人公の

今のお年寄りたちは教育や医療も十分でなかった時代に自分たちの親を扶養しながらここまで日本を発展させてきました。そのおかげで今の若い世代が豊かに暮らしていることを考えると受け取る年金に差があったとしてもそれだけで若者が損とは言えないと思いませんか?

という台詞で、確かに「論理のすり替えだ」「要約すると我慢しろってことか」と取られても仕方がないと思うし、荒っぽい言い方だ。厚労省は所謂「世代間格差」を是認しているのかといわれても仕方が無いとも思う。

さらにこれを擁護する記事
「若者が損とは言いきれない」 批判集中の厚労省「年金マンガ」はそんなに悪くない?|弁護士ドットコムニュース
がこれまた批判を浴びている。
こちらのはてなブクマ
はてなブックマーク - 「若者が損とは言いきれない」 批判集中の厚労省「年金マンガ」はそんなに悪くない?|弁護士ドットコムニュース
を見ると

gabill 一部の例外を持ちだして「一概には損とは言えない」と主張するのは、「勝つこともあるからパチンコは一概に損とは言えない」と言ってるのと同じ。

twisted0517twisted0517 世代間格差が問題って炎上してるのに「世代間格差はあるけど障害者年金 遺族年金はお得」とか一体何が言いたいんだかさっぱりわからない

Pi7Pi7 要約すると自分が障害者になって家族が死ねばいいってことだな

といったコメントが目に付く。

年金制度の有意性の例に遺族年金や障害年金を出すことは同意を集めにくい。

過去、このブログでも

若者に「年金を納めるな」と説く天木直人のたわごと - kodebuyaの日記
でそのような記事を投稿したが、この言い方をすると確かに

要約すると自分が障害者になって家族が死ねばいいってことだな

一部の例外を持ちだして「一概には損とは言えない」と主張するのは、「勝つこともあるからパチンコは一概に損とは言えない」と言ってるのと同じ。

といわれてしまう。
確かに現役世代(特に20代30代)が一番の不安や不満は老齢年金という人が生きている限り必ず訪れる保険事故についてなのであって、そこを正面に論じていかなければ説得力を持てないのではないかと思える。

現行の年金制度はどのような性質なのか

現行の年金制度で多くの国民が誤解していたのは老齢年金とは「現役時代に自分の納めた年金が政府に運用され、最終的に自分に返ってくる」という民間保険会社の販売する年金保険と同じものであると認識していたことだった。
現行の制度は「世代間扶養」を柱にし、その一方で公的年金を受給する際に感じるであろう*1スティグマを少なくするために現役時代に払い込んだ保険料を基に老齢年金の支給額を決定するというものだ。
つまり「現役世代から親世代への仕送り」が老齢年金の性質なのだ。

恥ずかしながら、私自身自分の経済的な問題があり親に仕送りはしていないが、それでも70歳を超える両親が人並みの生活ができるのはもちろん両親の若い頃の蓄えもあるにしても、それ以上にそれなりに年金が支給されていることで生活の基盤が安定していることがとても大きい。
老齢年金*2の支給水準は現役世代の収入の50パーセント程度を保つこととされているが、もしも年金制度がなく全てを自分の仕送りでなんとかしようとすると現役側の負担が極めて高くなり場合によっては共倒れという最悪の事態を招きかねない。
確かに、保険料は決して低くはないし、両親がもう健在ではない方にとっては「世代間扶養」といわれても困るのかもしれないが*3、こう考えればこれだけの負担でそれなりに戻ってくると評価してやっても良いのではないかと思っている。

制度の問題は少子化の対策が遅れたこと

老齢年金の問題を語るとどうしても高齢者の増加とそれに伴う年金支給額の増加がまずは問題になるのはしょうがないのだけれども、世代間扶養の性質を考えればむしろ早急な少子化対策が必要だった。
第1節 近年の出生率の推移|平成25年版 少子化社会対策白書(全体版<HTML形式>) - 内閣府
そこのグラフにあるように日本の少子化はここ20年度頃の話ではなく、そういった部分を所轄する旧厚生省のころから本腰を入れた対策をするべきであったがバブル景気など好景気のおかげで対策が後手に回ったのではなかったか。
あたりまえだが、今生まれた子どもが社会を背負い始めるには20年近くの年月が必要なのであって、言い換えれば「20年前の無策のツケが個々に回っている」のが年金制度の現状なのだと私は思う。

それではどうすべきか

一つは「世代間扶養」の理念を降ろし、納付と需給のバランスを同じにすることだ。
しかし、ここで問題になるのは現在進行形で受給されている方々の取扱で、「あなたは既に納付した以上に受け取っているから、今後は生活保護に回ってくれ」ということになりかねず、税金の投入が更に増えることが予想され現在の日本のように公的機関自ら「水際作戦」と称した憲法違反の行為をするような状況ではろくなことにならないことが容易に予想されるので認めるわけにはいかない。

そこで、次善の策だが国はとにかく少子化対策にリソースをさき、成果が出てくればそこから20年近く先までは言い方は悪いが食いつなぐ方策を次々打つべきだ。
と誰しもが思いつくようなことしか思いつかない。

*1:特に日本はその意識が強すぎる

*2:ここでは老齢厚生年金とする

*3:だから公的支援は「自助」だけではなく「共助」「公助」があるといわれる