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kodebuyaの日記

再分配にYES!!そして橋下にNO!!の食レポブログです。

労働時間の削減に成果主義は解決策になり得るのか

過労死 電通 成果主義 サービスはただじゃない

電通の女子社員が自殺したことが労災認定された点については、何よりも故人のご冥福をお祈りする。
その上で、「月100時間を超える残業、パワハラ」が電通に限った問題なのか*1、それともこの業界特有の問題なのか*2という問題はあるにせよ、相も変わらずネットの世界では、
「辞めることをしなかったのは自己責任だ」
とか、
「高給貰ってるんだろ?」
とか、
「たかだか100時間ぐらいの残業で自殺する方がおかしい。俺の若い頃はだなぁ(略)」
甚だしきは
「クリスマスに自殺なんて」
という意見が散見されていて胸糞悪くなったのであった。
特に
「たかだか100時間ぐらいの残業で自殺する方がおかしい。俺の若い頃はだなぁ(略)」
という意見はおじさま達に受けがいいらしく長谷川秀夫という武蔵野大学の教授は自身のfacebook

月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない。(中略)プロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。(中略)また、転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき。

などとご高説を述べたので、当然炎上し、記事を削除して謝罪するハメに陥ったのであった。
www.huffingtonpost.jp
そもそも入社1年程度の人がどれだけ説得すれば「良い成果を出せるように人的資源」を獲得できるか見当も付かないし、それこそプレゼンをするためのプレゼンをする話になりかねず、「そんなことに消耗するくらいなら今回の案件をさっさと片付けてそれから組織の問題に切り込もう」として自分を納得させるのが関の山ではないだろうか。
ましてや今回の事件はセクハラも絡んでいる模様であり*3相談や提案が可能な状況だったのかという点に疑問符をつけざるを得ない。

その上、月100時間以上の残業に加え土日関係なく勤務の日々という状況でどうすれば「長期的に自分への投資」ができるというのか。ぜひ件の教授におかれましてはご自身の講義の中で武蔵野大学の学生さん達にそういったノウハウを伝授してあげてほしいと思う次第だ。
とはいえ、この手の反応は決して珍しいものではなく、数年前も
news.livedoor.comでも同様の「叱咤激励」*4があった。

成果主義は解決策たり得るのか?

president.jp
では、出席者の面々が日本の労働が「時間拘束主義」から「成果主義」に変わるべきだと主張するのだが、じゃその「成果」って何よ?と思ってしまう。
主席者の一人であるカルビー会長はこういう。

私は残業手当を払うことなんてまったく惜しくありません。しかし仮に、残業手当を一切合切払わないという制度にしたら、みんな残業なんかしなくなると思います。制度とか仕組みが悪いと、人間は残業代欲しさに働くという悪しき習慣になるんです。
(太字引用者)

そう、その残業手当を一切払わないが働いている状態が日本の伝統芸「サービス残業」というやつなのではないのか?
もちろん、会社のデスクでなければ仕事ができないとはいわないが、どれだけ残業代を支払わないという制度にしたとしても、「成果」を出すためやむを得ず会社に残り、若しくは休日出勤して会社の資料にアクセスする状態が現れることは明らかだろう。会社の評価基準として「限られた時間内に」「成果を出す」を明確にできる業種・職種がどれくらいあるというのだろう*5

サービスの対価を堂々と求め、それを従業員に分配せよ

日本の第三次産業は生産性が低いのだという。
それは、長時間労働が原因だということであり、全くその通りなのだが、それを求めるクライアント側と「かかった手間暇の料金は頂戴しません」とする態度がクライアントへの誠意と考えるサービス提供側との共犯関係なのではないかと思う。
「クライアント様」側にすれば1円でも値切りたい、もしくは同じ金額ならよりよいサービスを受けたいと考えるのは当然のこと。ここでサービス提供側が応じてしまうから本来であれば(お互いに)不必要と思われるサービスが付加され、それを付加するために現場が疲弊していくという事態になっているので労働生産性が低くなっているというべきなのではないか。

残業の中には「生活残業」があることは認めるが、「生活残業」をしなければならないほどの給料しか支給されていないという実情もあり、この点を改善させなければ「成果主義」という制度は「低額働かせ放題」になりかねない。きちんと労働に対する対価を請求し、その収益を還元させることで、従業員の負担を何らかの形でクライアントに転嫁させるのが当然という社会にならない限り、いつまでもこの国では「過労死」がなくならないと主張しておきたい。

*1:電通事件 最二小判平12.3.24 民集54-3-1155、労判779-13

*2:電通新入社員が自殺 広告業界に蔓延するクソ長時間労働の根深い実態を書いておく : おはよウサギ!

*3:被害者のtweetでは「私の仕事や名前には価値がないのに、若い女の子だから手伝ってもらえた仕事。聞いてもらえた悩み。許してもらえたミス。程度の差はあれど、見返りを要求されるのは避けて通れないんだと知る。」「男性上司から女子力がないだのなんだのと言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界である。おじさんが禿げても男子力がないと言われないのずるいよね。鬱だ〜。」という記述があり、何らかのセクハラ行為がなされていたと推測される 電通過労死の「1日20時間労働」「性的見返り」など生々しい実態→大学教授「残業100時間くらいで死んでしまうとは情けない」 - Togetterまとめ

*4:さすがの産経新聞も非難とは書けなかったらしい

*5:強いていえばサラ金の取り立てくらいか